Nick Lowe, Party of ONE (1990)

party_of_one.jpg CostelloのArmed forcesのB面最後の曲Love, peace and understandingからニック・ロウの名前を知ったとき、イギリスのロックの歴史を遡ることの楽しさを覚えた。しかも、ニュー・ウェーブからブリティッシュ・ロックに入ったせいか、ビートルズやストーンズよりも、むしろパブ・ロックの歴史のほうが身近に感じられた。

 それからブリンズレー・シュワルツやロックパイルのアルバムを聞いたりしていたが、その中心人物Nick Loweのソロ・アルバムもずいぶん集めていた。年末に久しぶりに聞きたくなって、CDで探して手元にあったのがこのParty of Oneである。このアルバム、ほとんど聞いた記憶がなく、またいつ買ったも覚えていない。しかしあらためて聞いてみると、ひねくれた英国ポップではなく、ストレートなロックンロール、アメリカ・ルーツミュージックを聞かせてくれる好盤である。バックはRy Cooder, Jim Keltner, Paul Carrackと鉄壁な演奏陣だ。

 それでいてドラムもギターもテクニックを聞かせるというよりも、音楽が演奏したくてうずうずしている連中が、お互いの趣味を確かめるようにして、好きな曲を演じている。その音楽への素直な喜び、どれだけ歳をとってもかわらない音楽への純粋な喜びを表現している実にいいアルバムだ。

 5曲目、What's shakin'on the Hillはたそがれ感が実にしぶいオヤジの音楽だ。7曲目All Men are liarsもパブロックの雰囲気をかもしだしながらもアメリカの「古き良き音楽」を奏でていて、イギリスとアメリカの幸福な出会いを感じさせる佳曲。続くRocky roadも軽快で、Cruel to be kindにちょっと似たチャーミングな歌だ。

 ギター、ドラムの乾いたドライブ感覚は、すぐにJohn HyattのHave a little face to meが入った名盤Bring the Familyを思いださせる。というかそれも当然、このアルバムもギターRy Cooder、ドラムが Jim Keltnerで、そしてベースがNick Loweである。John Hyattを初めて知ったのは、ポッパーズMTVで流れたHave a little face to meの印象的なPVだった。この曲は長く不遇が続いていたHyattの実質的には初めてといってよいヒット曲である。モノクロのジャケットにふさわしい、皺の刻まれた本人の正面からの表情が音楽の渋さを物語っている。

 この2枚のアルバム、演奏者が同じということもあるけれど、それ以上に売れようが売れまいが、自分たちの好きな音楽を、一人でではなく、気のあった仲間同士で高い志をもってバンドとして演奏しているところに強い精神的同一性を感じる。

 ところでこのアルバムの3曲目はGai-Gin Man。1988年暮れの日本を訪れた外国人の日本のスケッチである。この曲はイギリスならではの皮肉が効いていてじっくり歌詞をつきあわせながら聞きたい曲である。