Isley Brothers, 3+3 (1973)

3+3.jpg アルバムが一斉に再発されて、「局所的」に盛り上がりを見せているIsley Brothers。ピーター・バラカンの一押しはこの「3+3」とのこと。前作までのフォーク・ロックのアプローチも一段落し、いよいよメロウなグルーヴ感覚を活かしながら、そこにファンクの骨太なリズム・セクションが加わった記念碑的なアルバムである。

 しかしこのメロウ感は、たとえば彼女を部屋によんでこのアルバムをかけてしまったら、絶対に失敗するメロウ感である。それは良い意味での過剰だということ。どう考えてもこのアルバムはBGMには使えない。クリスマス・イヴにかけるには完全にミスマッチなアルバムだ。たとえば2曲目のDon't let me be lonely tonightとか、James Taylerの曲だけど、甘すぎて聞いているこちらが狂ってしまいそう。解釈が良すぎて音楽に聞き惚れてしまうし、だいたいこのタイトルを日常的にはささやけないでしょう。そうした日常から乖離したところに音楽の固有の世界を作ってしまうIsleyのクオリティに感服...

 バラカンが勧めるだけあってどの曲も完成度が高い。3曲目、If you were thereなど「キラキラ」していて、心も体もうきうきになれる名曲(というかこれ、シュガーベイブがコピーしていた)。6曲目もリズム・セクションのはつらつとした進行に引き込まれる。そしてこのアルバムには、Summer Breezeが入っているし。この暑苦しいバンド(by 「国境」のマスター)が「夏の清涼」を歌ってしまうのだから、これは脱帽もの。

 一番好きなのは4曲目You walk your wayか。最初のハモンド・オルガンのせつなさがたまらなくいい。そしてヴォーカルの語尾の跳ね上がりがとてもセクシー。精神的に腰砕け状態になる至上の名曲。