Aretha Franklin, Rare & Unreleased recordings (2007)

rare_and_unreleased.jpg 1966年から1974年までのアウトテイク35曲。アレサを手がけたジェリー・ウェクスラーが編んだ未発表音源集は、とにかくアレサへの愛に満ちあふれた丁寧な仕事から生まれたアルバムだ。こればかりは日本盤のウェクスラーの解説を読みながら聞きたい。実にアレサへの信頼、尊敬、愛情に満ちた最高の解説なのだ。もちろんアレサをスターダムに押し上げたのがウェクスラーだが、自慢話はいっさいない。裏方として、これらの音楽がいかに生まれたのか誠実に説明してくれる。このアウトテイクを作ったときウェクスラーは91歳。

 実に様々な曲がおさめられている。スイングしたくなるグルーブ感に満ちた曲もあれば、こちらの涙を誘うスイートなバラード、ゴスペル・ソウルの崇高な力強い曲もある。どんな曲でもアレサは歌いこなしてしまう。しかも、けっして激しくシャウトしているわけではないのに、魂からの叫びがこちらの魂も揺さぶるのだ。

 アウトテイク集というとばらばらな曲が記録として並んでいるというものがけっこうあるが、このアルバムに関しては、そうした「とりあえず、眠っていたものを発掘してきました」という雑さがまったくないのだ。年代を追いながら、60年代から70年代にかけて、黒人のための音楽ではなく、音楽に人生の誠実な喜びを求める人すべてに向けられた音楽へと、世界が広がってゆくのを実感するのだ。

 そして最大の愛。それはウェクスラーのもとに送られた、ピアノの弾き語りのアレサのデモ・テープから始まり、やはりピアノの弾き語りで終わる、この構成だ。最後の曲はAre you leaving me...彼にとっての本当に愛は、自分のもとを離れて、さらに広い世界へと出て行くことを、心から見送ることになったのだろうか。