Rawlings Machine, Dave

DRM_cover_email-1024x1024.jpg ジャケットの中心には、Dave Rawlingsと、その音楽パートナーGillian Welchが写っている。ソロ名義になってはいるが、全曲とも二人の共作である。またGillian Welch名義のソロアルバムでも、ジャケットには二人のイラストが描かれ、Daveが全曲に参加している。どちらがメインヴォーカルをとっているかの違いだけで、デュオの作品と言える。実際アルバムのクレジットはback vocalではなく、単にvocalと記されている。

 音の作りも変わらない。主に2人のヴォーカルと、ギター、ベース、マンドリン、フィドル、マンドリンそしてドラムという最小限の構成である。ただ今回のアルバムでは3曲にストリングスが入っている。

 使われている楽器からすれば、カントリー、ブルーグラスと分類したくなるが、少なくとも単純に陽気な曲はない。またノスタルジックなところはあるものの、懐古的な雰囲気はみじんもなくはなく、たとえゆったりしたテンポでも、張りつめた緊張感が、アコースティックギターの弦の金属の響きから伝わってくる。

 彼らの魅力は、ゆっくりしたテンポのなかで、音がひとつひとつきわだちながら、やがてひとつの旋律をなめらかに奏でていくところにある。

 たとえば1曲目The Weekendの2分30秒過ぎのギターによる間奏。早弾きすることは決してないのだが、弦が跳ねながらもメロディアスな旋律を奏でてゆく。やや哀切を帯びたそのメロディは、だからといって湿っぽくはならず、一音一音をはっきりと聞かせる。

 2曲目Short Haired Woman Bluesも、アコースティック・ギターの前奏から始まる。この曲は、彼らの曲調には珍しく、かなりストリングスが導入されている。

 3曲目は11分近くもあるThe Trip。ここでの歌は朗読詩に近く、寄る辺ない旅が語られる。モノクロの映画の画面で、人々が南へ向う列車に乗り込む姿、男の擦り切れたブーツ、そして年老いた黒人男性の表情、それらがすべて風景の中に溶け込み、つづられてゆく。

 4曲目はドラムもベースもなく、ギターの弾き語りで歌われる。エコーのかけ方、そしてミシシッピーへの言及が、ボブ・ディランのMississippiを少し想起させる。ただタイトルがBodysnatchers(墓堀泥棒)というように、こちらの曲はずっとディープではあるが...

 5曲目と6曲目は、このアルバムのなかではスタンダードなカントリーナンバーで、ほっとできる。そしてラストのPilgrimはボブ・ディランのOne of Us Must Know(sooner or later)を彷彿とさせる、少しワイルドな歌い方。そして、ラスト近くKeep rollin'のフレーズはザ・バンドとヴァン・モリソンのかけあいをも思わせる。

 7曲とアルバムにしてはちょっと物足りない曲数だが、どの曲もGillian Welchのアルバムと同様、実に丁寧に作られている。ギターの一音一音に気を配り、絶妙な間を取り、ヴォーカルのハーモニーもどちらかが主張することはなく、まさに「調和」している。職人というにふさわしいできばえのアルバムだ。