The Staple Singers, Be Altitude : Respect Yourself (1972)

Staple_Singers.jpg 名盤であることはわかっていても、確認作業として聞くのではなく、新鮮な出会いとしてはたしてどれだけ聞けているだろうか。世の中で名盤と言われるものをひとしきり聞いてみることは勉強にはなるかもしれないが、音楽自体との出会いに感動して、音楽そのものを体感できるかは、世間の評価とはまったく別だ。たくさん音楽を聞いているからといって、そうした体験がいつもやってくるわけではない。

 最近になって、突然虜になってしまったのがこのアルバムだ。70年代初頭のソウルが持っていた社会的な運動を、Respect Yourselfというタイトルほど象徴するものはない。だが、このアルバムの面白さは、さまざまな音楽ジャンルが融合していることだろう。本人たちのバックボーンであるゴスペルサウンドを基調としながらも、ブルース、ソウル、ファンク、ロックそしてレゲエまでいろんな音が混じり合って強い力動感を生んでいる。このアルバムは、黒人による黒人のための音楽ではない。人間の解放という願いを持ったときに、万人が表現しうる音楽がこのアルバムには満ちあふれている。

 そしてこのアルバムがマスル・ショールズで白人ミュージシャンを起用していると知ったとき、このアルバムが、黒人的伝統に根ざすだけではなく、同時代の音楽と呼応しようとする高い志のもとに作られていると思った。

 とにかくリズムがタイトである。Respect Yourselfの地を這うようなリズムは切れのよいドラムワーク(特にスネアの音)と、冷静なベースのリズム進行によるものだ。怒りに任せるようなことはまるでなく、淡々としているが、同じリズムを聞いているうちに、じわじわと「自分を尊ぶ」という意味の重さが伝わってくる。

 その後に続く、Name The Missing Wordは、ポップなストリングスから始まるが、すぐに転調して、アーシーな雰囲気に、メイヴィスのヴォーカルが重ねられる。このポップさとアーシーさが交互に展開する、このアルバムの幅広さを表現している曲だ。

 そしてI'll Take You ThereとAre You Sure?はレゲエの色調の曲。ゆったりとしたメロディにユーモアさえ感じるこの曲を聞くと、脅迫的で強制されたメッセージでは決して世の中は変わらないとひしひしと感じる。メイヴィスを始めとする歌い手の寛容さ、度量の広さを感じる素晴らしい曲だ。

 ゴスペル音楽も、そのまま演じられるのではない。例えばThis Old Townは、リズムもアップテンポでご機嫌な曲だが、だが、その繰り返されるリズム、そしてそれに乗せて、だんだん高揚していくヴォーカルの熱はまさにゴスペルを彷彿とさせる。教会という場所に縛られない、誰であっても思わず踊りたくなるような、ご機嫌なゴスペルである。

 ステイプル・シスターズ、そしてグループを統括するお父さんも、黒人文化の土壌の中で鍛えられたプロである。だが、彼らが素晴らしいのは、仲間内の閉じていないことだ。音楽のもつ最大限の可能性を持って音楽を作る続けたことだ。それは60年代のライブなどを聞くとよくわかる。その場にいる信仰者に向けての音楽。だが、このアルバムの音楽はそうしたものではない。宗教や人種を越えて、ひろく希望を掲げるあらゆる人に呼びかけられた音楽なのだ。高揚感とは、人々の出自を問題にせず、人々に呼びかけるための人間的感情だ。