このアルバムの初回限定として付いているDVDのスタジオライブが素晴らしい。2人で対面で位置取って演奏をしている。2人の表情には音を「あわせる」ことへの喜びがあふれてる。そんな中で聞こえてくる音楽は、商品へとパッケージ化される前の、加工を免れた音楽だ。
『表情』に収められているThree Sheepという曲が一番好きだと言ったら、「これはシューゲイザーですよ。先生、やっぱりシューゲイザーが好きなんですね〜」と言われた。「ああそうか。オレの30年間は何も変わっちゃないな」と納得したが、趣味として音楽を聞いている限りは、ずっとシューゲイザーが好きでも誰に何も言われない。一方、演奏する側は、ずっと同じ地点に立ち続けることはさまざまな状況の中でおそらくは許されないことなんだろう。いつまでも「サラバ青春」ではいられない。
変身。くるくる変わっていくという意味か。今回のアルバムはとてもヴァリエーション豊かだ。だがその豊かさはそれぞれの曲が、何らかの用途にあわせて作られていることと無関係ではない。テルマエ・ロマエのような曲は完全に効果を狙って道具化され、パッケージ化されているような曲だ。そこまで露骨ではなくても、レディメイド感漂う曲が多い。
シングル「用」や、手がけるプロデューサー「用」、あるいは映画等の演出「用」と、そこまで曲を文脈にあわせなくてはならないのだろうか。
演奏も元気いいし、ヴォーカルも誰にも取りかえることのできないユニークさ。でも屈折感や向う見ずさは失われてしまっている。風が吹いてない...のか。
「変身」というより「まだ柔らかな幼虫」、「満月に吠える夜」よりも「世界が終わる夜」に身をひそめたい。
でもDVDのスタジオライブは素晴らしい。音楽が突き動かす衝動がある。こんなことができる人々はチャットモンチーしかいない。田舎出身のおじさんは、いやだと言われてもいつだってこうした若者を応援し続けるよ。CD買い続けるよ。
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