Stevie Wonder, Fulfillingness' First Finale (1974)

fulfillingness_first_finale.jpg 前作Innervisionsは、完璧な作品で、一音一音まで緊密に構成され、その完成度の高さに聞き終わるとちょっと脱力状態になってしまうが、このFirst Finaleは、もう少し余裕をもって聞けるアルバムである。

 それはたとえばToo shy to sayやThey won't go when I goのようにメロディだけとるならば、あまりにも直接的で平明な曲があるからかもしれない。

 だが24歳にしてすでに人生の「ファースト・フィナーレ」と言ってしまうほどアルバムの充実度は高い。ポップでいて驚きに満ちた音楽だ。その驚きというのは実は細かいところに現れる。たとえば1曲目、さびのBum, Bumのバック・コーラスの「ニャー」というかけ声が不思議だ。

 このアルバムで一番好きなのはA面5曲目のCreepin'。のっけからドラムスの入り方がかっこいい。その後もこの曲はシンセではなくて、ドラムスが見事におかずをいれながら入ってきて、甘い愛の歌にもかかわらずタイトな雰囲気に仕上がっている。それから2曲目のゴスペルタッチのHeaven is〜。こちらの気分をいやがおうにも高揚させてくれる。

 B面にはいると、ファンクのねばりこいリズムにのせて、曲がはねる。「ジャクソン5が僕と一緒に歌うよ〜」っていうところもノリノリでいいです。最後のPlease don't goも卓越したセンスを感じる曲だ。おなじみのハーモニカもよいし、Tell me whyの力のこもった歌い方もよいし、Don't go babyとたたみかけてくるところの迫力、そしてクラップ音がはいってゴスペルテイスト全開で終わっていくところなど、まさにフィナーレだ。

 高みに達した落ち着きが感じられるとはいえ、音はあくまでカラフルだし、ヴァラエティに富んでいる。やりたいことをそのままできてしまえる、そのような天才の恍惚を満喫できる一枚だ。