Elvis Costelloのアルバムで初めて聴いたのは1979年のArmed Forcesで14歳のときだった。Costelloは25歳。ロックを聴き始めたころに夢中になったのは、Costello、Talking Heads、そしてIan Dury&The Blockheadsだ。Talking Headsは初めて行ったコンサートだった。前座はプラスチックス。Ian Duryには大学になってコンサートに行った。Elvis Costelloも何度か見に行った。だが、Get Happy以後、I wanna be lovedのヴィデオクリップを見るまで、Costelloからはかなり遠ざかっていた。New Waveを過ぎてからのCostelloと自分の趣味とが合わなくなっていたのだ。そのCostelloを再認識したのがこのKing of Americaだった。Costelloは32歳。
架空の物語として自分のオリジンをもう一度見つめ直すような、過去への回帰がそのころの自分の心持ちに呼応したと言えばよいだろうか。New Waveを聴き続けながらも、大学に入って、それよりも過去の、Kinks、Eno、Kevin Ayersなどを知るにつれて、いままで聴いてきた音楽が流行に過ぎなかったという気が強くした。そんなときに出されたのがこのアルバムだ。ここにはアメリカへの屈折した憧憬がある。だがあくまでも音作りは正面から切り込んだシンプルで素直な音作りだ。臆面もなく過去と対峙する姿勢が、当時のロックを聴く自分の姿勢と重なって、このアルバムは何度も何度も聴いた。その後も、LPのみならずボーナストラックにつられてCDも買い直して、ライブ収録のはいった2枚組CDなども追っかけた。
バックにアメリカのルーツ・ミュージックの演奏を代表する面々をそろえ(おそらくCostelloより年上のメンバーが多いのでは?)、アコースティックな構成で、スタンダードと言える楽曲が並んでいる。カバー曲であるDon't let me be misunderstoodなどあまりにも素直すぎて、微笑ましい程だ。7曲目Little Palacesではアコースティック・ギターとマンドリンの音だけにほぼあわせて、Costelloのせつないシャウトが聴かれる。そしてこのアルバムを一番象徴しているのはB面の1曲目American without tearsかもしれない。アコーデオンの音色が喜びと悲しみをないまぜにした微妙な感情を伝えてくれる。しかしこのB面には他にも名曲が並んでいる。Jack of all paradesやSuit of ligthsなどCostello流のポピュラー音楽の粋を集めた曲だと思う。New Waveの余韻とルーツへの憧れがうまく調和している曲ではないだろうか。
このアルバムを契機として、しばらく新譜を買い続けるのだが、SpikeにしてもBrutal Youthにしても、強く何度も聴きたいとは思えなかなった。こうして再びCostelloと離れていった。今度はいつCostelloに再会するのだろうか。
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