今年のRyan Adamsの新譜が出た。Easy Tigerと同じゆとりのある雰囲気を漂わせながら、正統的なアメリカン・ロックを堪能させてくれる曲が並ぶ。
青春の最高傑作Heart Breakerのようなナイーブなところは影を潜め、Rock'in Rollのようなニュー・ウェーブのひ弱さのようなものもすっかり払拭されている。
もちろん憂いに満ちた曲もある。しかしAdamsのヴォーカルは酔いどれのつぶやきではなく、あくまでも骨太で、シャウト寸前の歌いっぷりだ。曲の沈んでゆく感覚と歌の激しさのアンバランスが素晴らしい。
Easy Tigerよりもとにかく曲がヴァラエティに富んでいる。Magickのようなバンドの緊迫感を感じさせる曲は、前回のEasy Tigerとは違うところだ。いたって短い曲だが、密度は濃い。次のCobwebはU2っぽいニュー・ウェーブの残り物のような曲で、途中のギターのリフがダサイ。ヴォーカルのエコーもダサイ。でもキャッチーで、深みもあってと、なんだか中途半端な曲だけど引き込まれる。かと思えばEvergreenのような可憐な小曲もあり、Like YesterdayのようなCold Rosesを思い起こさせる泣きのギターに心を揺さぶられる曲もあり、これでノック・アウトだ。最後はピアノの弾き語りでRyanの優しい声でしめくくられる。
アルバムのトータル感はEasy Tigerのほうがあり、今回は多少散漫なところもなきにしもあらずだ。朝聞いたほうがよいのか(Goldの前半のように)、深夜に聞いたほうがよいのか(Goldの後半のように)・・・しかしどんな曲も聞いた瞬間にRyan Adamsでしかありえない。駄作、傑作という評価の定規にひっかからないところがこのミュージシャンの偉大なところなのだろう。
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