The Clash, Sandinista! (1980)

sandinista.jpg 今日12月22日はジョー・ストラマーの命日である。クラッシュの『サンディニスタ』は、出た当時ピーター・バラカンが興奮気味にFMラジオで紹介していたのを今でもよく覚えている。毎週土曜日放送だったその番組では毎回新譜を取り上げて紹介していたが、『サンディニスタ』が出たときには、バラカンはまるまる1ヶ月、4回にわたってかけつづけた。

 なにせLP3枚組である。ちょうど高校に合格したときで、そのお祝いで当時4700円したこのアルバムを購入した。各面6曲、全36曲にもおよぶ大作だが、散漫な印象はまったく受けなかった。むしろ「クラッシュによるパンク」という定型を打破して、あらたな創造へと向かうどん欲な追求の結果が、このような多くの曲を生んだのだろう。

 まずはA面1曲目、当時多くのバンドが用いていたダブのリズムを基本としたエコー処理が顕著なThe Magnificent Seven。次のHitville UKはまさにUKなせつないメロディを聞かせてくれる。そしてレゲエ風味のJunco Partnerへ。

 B面の1曲目はRebel Waltz。この時期のクラッシュの特徴である、不器用で、ナイーブな哀しみに満ちた曲だ。そのあとB面を聞いているとパンクの微塵もないのだが、今から考えれば、こうした非西洋のリズムや進行を自らの曲作りに入れることは、決して珍しいことではなかったのだ。C面3曲目のLet's Go Crazyは完全にラテン・ミュージック。

 またパンクのレッテルは外してしまっているから、たとえばSomebody Got Murderedなど、サイケデリック・ファーズかと勘違いするほど華やかなアレンジだ。あるいはPolice On My Backのような緊迫感はあるのにポップなアレンジの曲もある。

 確かに混迷したアルバムだ。でもE面1曲目など、確かにリード・ヴォーカルが女性で、もはやクラッシュの曲と呼べるのか疑問がわくほどだが、だがこれもとてもよい曲。何よりも音楽への切迫した態度がある。

 どれほどのミュージシャンがこれほど切迫した態度で音楽を作ろうと思っているだろうか。それが記録されただけで十分に時代を証言するアルバムだ。たとえ普段は聞かなくなってしまったとしてもいつまでも愛すべきアルバムだ。

 昔NHKで1時間ほど、クラッシュのライブを放映したことがあった。歯が抜けたまま絶唱するジョー・ストラマーの姿が今でも目に焼き付いている。イギリスの若者たちに少しでも聞いてもらうために、ライブチケットを安くしているのだと真摯に語っていたジョー・ストラマー。こんなにも時代にコミットしてしまったバンドでありながら、今でも聞かれ続けるのは、時代の資料としてではなく、「お前はなぜ音楽を聞いているのだ」と正面切った問いかけを今でもクラッシュは聞く者に投げかけてくれるからだ。