ニール・ヤングのライブアルバム「Live Rust」は、その前作「Rust Never Sleeps」のツアーから収録された。「Rust〜」はヤングからの「パンクへの回答」と表現されることが多い。このアルバムのA面はアコースティック、B面はエレクトリックで構成されている。確かにこのB面のエレクトリックな曲調の激しさは、ロックがもつ緊迫感、「明日を生きられない」といった性急さを、見事に表している。それをパンク世代ではなく、60年代後半からアメリカン・ロックを生き抜いてきたヤングがしたことに、大きな意味がある。
パンクとは果たしてそれまでのロックへの否定、断絶だったのであろうか?今から振り返ると、そうした「否定、断絶」といった衝撃度は、むしろショービジネスとして演出されたものという面が強い。たとえばピストルズの曲なども、今から聞けば、いたってポップ、言動に反社会的印象がつきまとうとしても、音楽的には、既存の音楽の破壊といった斬新さは認められない。つきつめていえば、パンクは、ロックがそれまで標榜してきた「否定、断絶」といったものを、ファッションのレベルで、パロディ化してしまったものではないだろうか。そして、もしロックの存在価値のひとつが「否定、断絶」にあるならば、まさにそれはヤングが70年代に実践してきたことである。
ヤングの場合、「代表的なアルバム」というのが挙げにくい。まずどのアルバムも似ていない。毎回やることが違うのである。そして、アルバムを単位として聞くというよりも、ひとつの曲の緊張感に対峙するという、聞き方をせまられるのである。この決して一カ所にとどまることなく、常にぎりぎりの切迫感をもって、ロックミュージックを作り上げてきた、この態度こそ、ヤングが「パンクへの回答」としたものではないか。
このライブアルバムもアコースティックから始まり、そしてエレクトリックへと展開していく。しかしある曲をアコースティックで仕上げるか、エレクトリックで仕上げるかはたいした問題ではないだろう。それは「My, My, Hey, Hey」、「Hey Hey, My, My」の2曲が端的に示している。Suger Mountainの澄み渡ったギターの音色も、Powder fingerの大音量のバンドのアンサンブルも、どちらであっても、会場に張りつめる緊張感は変わらない。