Elton John, Captain Fantastic And The Brown Dirt Cowboy (1975)

captain_fantastic.jpg 名前は世界的に有名なのに、先入観だけでアルバムをきちんと聞いたことのないアーティストがいる。Elton Johnもその一人だった。初期のアルバムは何枚か聞いたが、70年代中頃からの大規模なコンサートを開いては巨額の富を得るようなイメージの作品はあまり食指が動かなかった。しかしそういった偏見というのは本当に自分の趣味を狭くする。

 Elton Johnの自叙伝というべきCaptain〜は、ロックの奥深さを実感させてくれるすばらしいアルバムだ。良質なエンターテイメントと音楽的水準の高さがそのぎりぎりのバランスのところでつりあった芸術作品である。もう少し派手なところでは、当時のイギリスならばクイーンが体現したアートロックである。またそれはボウイが時代的に体現できなかったアートでもある。そう考えるとクイーンとボウイのデュエットは、時代に乗り遅れたボウイの苦し紛れの一手だったのだろう。クイーンがかわいそうだった・・・。

 さて、このアルバムはそんなイギリスのロックの成熟を思う存分味あわせてくれるアルバムだ。どの曲も軽妙で、ドラマティックで、それぞれの楽器の音が生き生きしていて、ポップで、深みがあって、ほろっとさせてくれてと、申し分ない。そしてどの音がいかにもイギリスなのだ。

 ところでこのアルバムはデラックス・エディションで購入したのだが、そのおまけがきわめて豪華。75年のライブがCD1枚分収められているのだが、なんとアルバムと同じ曲順でそのまま再現しているのだ。このライブが素晴らしい。バンドの緊密な音のアンサンブルが見事だし、ライブの高揚感があるし、We all fall in love sometimesの最後は一緒に合唱しないではいられない! というわけで本当はCD1は余分な4曲のボーナスをつけないでほしかった。Curtainsの荘厳なコーラスで終わってほしかった。20秒の曲間はあるものの、この完結した世界には余分だろう。